自分はエンジニアだと思ってたけど、たぶん違うねこりゃ。

僕は小さい頃から図工が好きで、中学に入ってからは技術や美術といった「何かを作る」授業がとても好きでした。その流れで工業高校に入学し、これまた流れで工業大学まで行きました。

実家が自動車部品製造ということでまわりからは後を継ぐと思われつつも、「それ以外の仕事が良い」と自動車関係ではなく段ボール会社に入社。その後、縁があって母校で講師をやっていましたが「やっぱり家の仕事をやりたい」と実家の仕事をやることに決めました。

そう考えると小さい頃から今までずっと「ものづくり」に関わることを(好きで)やってきたんだなと思います。高校生のころは自動車部で燃費競技のためのマシンの設計図などを描いていました。だけどその頃からかなぁ、作るのが好きなのに作るのが嫌いという何となく矛盾した考えを持つようになったんです。

エンジニア的思考 アーティスト的思考

工業高校では実践的に機械操作でものづくりをします。工業製品を作る基礎を学ぶわけです。図面を描いたり、材料を切り出したり、寸法を計り、加工し組み立てる。図面とにらめっこして計算して寸法精度を高めて組み立てる。ちょっとでも大きければ入らないし、ちょっとでも削りすぎたならガタが出て不良品。ぴったり・すっぽり入ったら「良い仕事したね」ってほめられます。

大学では技術面よりも机上での計算ばかり。理論を組み立て流速がどうのエネルギーがどうの・・・。

 

いやー、本当にもう・・・つまらない(笑)

 

好きで選んできたつもりだったけれど、精度を高めて作る「ものづくり」というものに何の興味も持てないでいました。100分の何mmだとか、1000分の何mmだとか、それを追求することに喜びを見いだせない。でもね、エンジニアであればそういう部分を追求していくものだと思うのです。というかそれが普通ですね。

 

そう考えると僕はエンジニアではないしエンジニア向きでも無いなって今朝気がつきました。

 

もちろん僕が何かを作る時にはただ切って付けて「はい!完成。」なんてことはしません。部分部分にこだわりを持ちながら作っています。

以前レザークラフトの電動コバ磨き機を作っている時に父との会話の中で「お前がやってるのは芸術であって、そんな作り方してたら時間ばかりかかって儲からない」とこのようなことを言われました。確かに機能的には同じであればさっさと組み立てて納品してしまっても良いのかもしれませんが、その機械が持つ雰囲気とか歴史とか、これから生活の中に溶け込むには・・・って考えてたら自分なりのこだわりが出てきてしまって「はい!くっつけて作業完了!」なんてことはやりたくないと思いました。

父は職人的な人で設計図のとおり作る技術者です。

僕は設計図どおりに作るのがあまり好きではありません。一応自分で何かを作る時は設計図のようなものは描きますが寸法精度プラスマイナス何mmなんて描きません。

そういうのも含めて、ハンドプレスは僕が作る工業製品ではなくアートの一部なんだなって思ったわけです。アートと呼ぶほどきらびやかなものではないのですが、毎回ちょっとずつ仕様が違うのです。良く言えばひとつひとつの個性。悪く言えば同じものが作れない。

機械で大量生産してるわけではないのでバラツキがどうしても出てしまいます。その辺のバラツキを少なくしていくのがエンジニアなんですね。でも僕はそれは個性だって思っちゃうんです。1個目と同じものを作ろうと思ったけど2個目はちょっと違う。でも2個目と同じものを作ろうと思っても3個目はまた違うものが生まれちゃう。

もちろん「これは失敗だ・・・」と思うものは作り直しますが、完成した時点での差というのはそれぞれのオリジナリティだと思ってます。同じくならないから妥協しているのではなく、ひとつひとつがアートとして完成しています。

いままでこういうことは無意識の中で思っていたことかもしれません。今やっている「アウトドア関連のアイテム各50セット」という仕事をやっている中で、言葉にならない思考が言語化されてきたのだと思います。同じものを大量に作るのが自分の「苦手分野」だということに気がついてしまいました。

もちろん引き受けた以上はこれらをバッチリ完成させて納品します!自分にとってこれは良い経験だと思います。

まとめ

結局のところ、自分はエンジニアの思考ではなくアーティスト的思考で「ものづくり」と向き合っているということがわかりました。「ものづくりが好きだけど嫌い」というモヤモヤした感情がスッキリ晴れた印象です。

僕よりも技術力の高い人はたくさんいます、1000分の何mm単位の精度とか機械にはかないません、でもモノが持つ雰囲気とか心地よさとか自分なりの感性を持ってものづくりをしています。自分の感覚を信じてこれからも向き合っていきたいと思います。