偉大なる岡本太郎
※元記事2017.4.27
※2020.8.12リライトしました。
今から約10年前くらい、僕が大阪で働いている頃に「仕事をやめようかどうか」毎日思い悩み週末もただ現実から逃げるように大阪の街を歩き回っていました。
楽しいはずの週末も、寝てしまえば月曜に近づく恐怖があり、空は晴れていようとも心の中はどす黒い雲で覆われたような沈んだ気持ちで過ごしていたように思います。
ここに行こうと決めて目的を持って行動したのではなく、なんとなくモノレールに乗りいつもと違う場所に行ってみようと思ってたまたま見かけたのが太陽の塔でした。
大阪万博の時に建てられたもの、岡本太郎という芸術家が建てたものということくらいは知っていました。
もしかしたらその場所でもらったパンフレットに書かれていたことを今思い出しているだけかもしれません。
僕は「太陽の塔」の芸術がよくわかりません。
でもただただデカく、異様な立ち姿で僕を迎え入れてくれたような感じがしました。
自分がこれからどのように生きて行きたいのか、自分は何をしたいのか、自分が進むべき方向は何か?
それを考えつつ太陽の塔を見上げながらその周りを一周しました。
そこで全ての答えが出たわけではないですが、仕事を辞めて地元に帰ることを決心しました。
その場には多分・・・30分もいなかったと思います。
喋りもしない太陽の塔に人生相談をしてたかのような気持ちになります。
機会があればもう一度訪れたい大阪の大好きな場所です。
それから数年が経ち、今はそれほど思い悩むこともなく毎日を過ごしています。毎日平穏に過ごしているからこそ・・・「このままでいいのかな?」と行った漠然とした不安に襲われることもあります。
毎日をただ平然と過ごしていてはいけないぞ。
自分からアクションを起こしていかないとまずいぞ!という心の奥の自分の叫びを封じ込めないために一冊の本をいつもカバンに忍ばせています。
この中で「手づくり」に関することが述べられています。
自分もものづくりをしていく人間としてハッとさせられます。
あんまり器用に出来上がったものは冷たくて、何か自分の外っ側にあるような気がしてしまう。それは自分ではとうてい作れないもの、つまり本質的には自分から離れたものであるからだ。
昔、手づくりしかなかった時代、職人の仕事は機会製品のようなものだったのだ。機械のように正確に、熟練した器用な手がロクロを廻し、木を削った、となると機械も手づくりも結局変わりはない。
僕自身は以前に「ハンドプレス」を作って販売していました。
自分が作るそれは製品というよりも「作品」というイメージでした。
というのも毎回作るたびに改善点が見えてくるし、それなら次はこうやって作ってみようとなる。一応図面はあるけれど作るたびに「自分の想い」を形にして付け加えたり切り崩したり。
同じようで同じものは無い。
ただハンドプレスという製品を作る上で「品質が安定していない」のは売っていいものなのか悩んだ時期もあります。工業製品であれば製品のばらつきはあってはいけない。あったとしても最小限にしなくてはいけない。
だけど僕はそれとは違った感覚で作ってたこともあり、そういう葛藤もありながらいくつかの製品を世の中に出してしまったことを後悔したこともあります。
つまり手づくり、手で作るというのは、実は手先ではなく、心で作るのだ。
心が参加して、生々しく働いていることが手づくりの本質だと言いたい。
手づくりは決して器用である必要はないのだ。子供の時には誰でも平気で作ったのに。大人になると、みっともないと自分で卑しめてやめてしまう。とんでもない、むしろ下手の方がよいのだ。笑い出すほど不器用であれば、それはかえって楽しいのではないか。
以外にも美しく、うれしいものが出来る。
そして僕は一時期職人になりたいと思うこともありました。
何かを突き詰めたスペシャリストになりたい。でも自分でものづくりをしていく中で職人ではなくアーティストでありたいと思うようにもなってきました。
その時の材料、気候、気分など変化する中で同じものを同じクオリティで作っていくことには喜びを感じない。むしろその時々で変化を加えて新しいものを生み出すことに喜びを感じる。
そして同じものは2つといらない。2つ目を作るならまた違った要素を組み合わせて新しいものを生み出したい。
そう考えると自分の今までやってきたことは間違いではなく、1つの方向性なんだなと本を読んで気づくことができました。
良く言えば「自分の都合の良いように解釈してる」とも。でもそれでいいじゃないか、楽しいじゃないかと・・・岡本太郎さんは教えてくれました。
昔、テレビで見た岡本太郎は変なおじさんという認識でした。
いつのまにかこの世からいなくなっていたけれど、数十年後に僕を支えてくれる心の師となりました。
生きていた頃の岡本太郎をもっとみておけば良かったな。
岡本太郎さん・・・僕はあなたが大好きだ!